大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和37(オ)1319 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告人の上告理由第一について。

原審は、上告人と訴外D間における本件家屋の賃貸借契約に際して授受された所

論一八万円の金員が権利金であつて敷金ではない旨を判示し、その認定の一資料と

して、論旨のように、上告人から右Dに差し入れられた甲第一号証の建物賃貸借契

約証書に敷金の点に関してなんらの記載がないことが認められるということを挙示

していることは、原判文に徴し明らかなところである。

しかしながら、記録により右甲第一号証を検するに、同契約証書第六項には、「

当方の失火に依り賃借建物火災に罹りたるときは貴殿に預託したる敷金は其返還を

請求致間敷候事」とあるのみならず、同第一項にも、「若し壱ヶ月たむ共支払を延

滞したる時は敷金の有無に不拘何等の催告を要せずして当然本契約は解除せられた

るものとし、直ちに建物明渡の御請求有之候共異議無之候事」とあり、その敷金の

額が一八万円であるとの記載こそないけれども、原判示のように、右証書に敷金の

点に関しなんらの記載がないものとは到底いいえない。而して、右賃貸借契約の約

定内容を判断するについては、右契約書が極めて有力な証拠資料であることはいう

までもないから、前示のような原判示は首肯し難い。すなわち、原判決には、この

点について、理由齟齬ないし審理不尽の違法が存するものといわなければならない

から、本件上告は理由があるものというべきであつて、その余の上告理由について

の判断を俟つまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、本件は、前記の点に

ついて、なお審判の要があるものと認められるから、原裁判所に差し戻すことを相

当とする。

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よつて、民訴四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 石 坂 修 一

裁判官 五 鬼 上 堅 磐

裁判官 横 田 正 俊

裁判官 柏 原 語 六

裁判官 田 中 二 郎

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